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さてふと見れば立派なる黒き門の家あり。
訝しけれど門の中に入りて見るに、
大なる庭にて紅白の花一面に咲き鶏多く遊べり。
その庭を裏の方へ廻れば、
牛小屋ありて牛多くおり、
馬舎ありて馬多くおれども、
一向に人はおらず。
ついに玄関より上がりたるに、
その次の間には朱と黒との膳椀をあまた取り出したり。
遠野にては山中の不思議なる家をマヨヒガという。
マヨヒガに行き当たりたる者は、
必ずその家の内の什器家畜何にてもあれ持ち出でて来べきものなり。
その人に授けんがためにかかる家をば見するなり。
柳田邦男著『遠野物語』
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